- ニューストップ
- 北京オリンピック特集
- 総合
- 記事詳細
ニュース:総合RSS feed
【奥運(オリンピック).com】(32)前門から消えた猫
このニュースのトピックス:奥運(オリンピック).com
胡同の古い家に住みつく猫。北京の人々と猫はずっと家族だった。だが、都市開発で古い家が壊されると猫たちは路頭にまよう。五輪で家を失ったあげく処分された猫は数十万匹に及ぶといわれている。(撮影・福島香織)北京はネズミが多いので、みんな猫を飼っていた。広東では食用になる猫も北京では家族。細い路地がめぐる下町「胡同」(こどう)の家の門には、猫用の出入り口があったものだ。しかし、胡同の古い家は五輪のための再開発でどんどん撤去されていく。猫は主人に従うのではなく家に居着く。一家が郊外に引っ越しても、猫は残る。家が撤去されると猫は路頭に迷った。そんな野良猫は、市内に20万匹とも50万匹とも言われていた。
北京市前門の界隈(かいわい)に暮らす知り合いの老夫婦は、そんな野良猫をかわいそうに思い、エサを与え続けていた。「1匹また1匹と居着くようになって、気がつけば10匹前後の猫がわが家に出入りしているよ。最初は怖がってエサを食べなかったやつが、だんだん慣れていくのがかわいくてね…」。人情の厚い胡同の人々は野良猫にも優しく、こうした家は1軒や2軒ではなかった。
居眠りする猫たちを眺めながら、地酒「二鍋頭」をちびりちびり飲む老人の昔話に耳を傾ける春の宵。彼はふと「五輪の夏までにこの家も撤去される。私たちが引っ越せば猫たちはどうなるのかね」とつぶやいた。私が引き取りますよ、ともいえず押し黙った。
先日、前門に行くとその家屋は撤去されていた。聞けば春から初夏にかけて、市当局が五輪に向けた環境浄化のために「野良猫掃討作戦」を行ったそうだ。もう北京で野良猫の姿を見かけることはまれだ。
(福島香織)



