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【君たちのために 元家裁判事のつぶやき】(65)歓迎された「動向視察」 (1/2ページ)
少年審判規則に、「保護処分の決定をした裁判官は、当該少年の動向に関心を持ち、随時、その成績を視察するように努めなければならない」と書いてある。
これを「動向視察」と言うが、裁判官を30年もやってきて、少年司法にこんな制度があるということを全く知らなかった(高い法壇から被告人に刑罰を言い渡した刑事裁判官は、宣告が終われば、その「犯罪者」とは永久の別れである。心配でも、連絡を取る方法がない)。
ところが、神戸家裁で少年事件を担当し始めてしばらくして、少年院を訪れ、用件が終わって院長と雑談していると、「裁判官から半年前に送られた少年が会いたいと言っています」と突然告げられた。
私が書いた決定書には「自己中心的で共感性と忍耐力がないと言う三大欠点が改善されないと将来に全く展望が持てない」と記載されていた。
少年に面会すると、「本を1冊丸ごと読めるようになりました」と顔をクシャクシャさせながら言った。漢字だらけの本が読めることが心底うれしいみたいだ。
車の免許も取れるし、新聞だって読めるし、もうこれで人並みの人生が送れるという手応えをつかんだのだろう。読んだ本の感想を尋ねると、とめどもなく流れるように話す。アッと言う間に2時間もたった。私の方も「この子は何とかなる」との期待を抱けた。
これがきっかけで私は「動向視察」が好きになった。私は、それ以降、少年院送致(長期処遇)の決定をする場合には、審判の席で、8〜10カ月後に面会に行くと予告するようになった。もちろん、与えた課題がどの程度こなされているかを確認するためである。嫌がられていないか心配だったが、杞憂(きゆう)だった。逆に、少年の方が、「口先だけで実際は来てくれないのではないか」と気に病んでいたようで、会いに行くと飛びつかんばかりに喜んでくれるのに驚いた。
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