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【主張】薬害エイズ裁判 不作為の罪に深い反省を
なすべきことをなさなかった不作為について官僚の刑事責任が確定する。「薬害エイズ裁判」での最高裁の初の判断である。役人は改めて不作為による結果責任の大きさを反省し、自らの職責を真摯(しんし)に果たすべきだ。
薬害エイズは血液製剤の投与を受けた血友病患者らがエイズウイルス(HIV)に感染し、500人以上が死亡した事件である。平成8年に旧ミドリ十字の歴代3社長や元厚生省生物製剤課長、元帝京大副学長の計5人が逮捕、起訴され、「産・官・学」の刑事責任が追及された。
最高裁は血液製剤の回収措置などを怠り、業務上過失致死の罪に問われた元厚生省課長の上告審で、この元課長の上告を棄却する決定を下した。元課長を禁固1年、執行猶予2年とした1、2審判決が支持された。
不作為が業務上過失致死罪に相当するとした判断を最高裁が追認した意義は大きい。厚生労働省など国民の生命を守る行政官庁の責務がいかに重いかが司法の場でも確認されたからだ。
国民の生命が脅かされかねない状況下で、行政担当者が漫然と見過ごすことは許されない。その責任は企業や学界などにも等しくある。
同じ薬害として注目された薬害C型肝炎訴訟は、原告の意をくんだ議員立法で全面解決への道が開けた。しかし、肝炎という疾病自体に対する医療体制の充実などについては、まだまだ解決すべき課題が多い。
過去の薬害には、服用した妊婦から手足の短い子供が生まれた睡眠薬の「サリドマイド」、胃腸薬キノホルムによって下半身まひなどを引き起こした「スモン病」、視力障害で問題になった腎臓病治療薬の「クロロキン」などがある。
どの薬害も構図は同じであろう。兆候があるのに行政は被害を小さく考え、製薬会社は目先の利益に走った。医師や研究者は自らの権威保持に躍起になる。その結果として、被害が拡大した。
薬害が発生したら直ちにその薬の使用や販売を中止し、回収を始める。その当然のことができない。みなが責任逃れを図るからである。薬害根絶のためにも、不作為を罪と認めた最高裁の決定を大きな教訓としたい。